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Vol.135 コーヒーの2050年問題って知ってますか?

 皆さんは「コーヒーの2050年問題」をご存知ですか?その名の通り、実は今コーヒーはある問題と直面しています。
今回は、この問題と日本におけるコーヒー消費について取り上げてみたいと思います。

 

1. コーヒーの2050年問題

 コーヒーが直面している問題、それは地球温暖化による気候変動です。コーヒーの原料は「コーヒーノキ」と呼ばれる植物で、その種子からコーヒー豆が採れるのですが、この植物は寒さに非常に弱いという特徴があります。

 それゆえ、コーヒー栽培は「コーヒーベルト」と呼ばれる赤道付近一帯(南回帰線から北回帰線の間)に集中しています。
加えて、世界で最も生産されている「アラビカ種」というコーヒー豆は、「雨季」と「乾季」がしっかりしている高地が栽培適地となります。

 温暖化が進むと、雨季と乾季の差が曖昧となり降雨量も減少すると考えられています。
その一方で湿度は上昇するとみられていますが、湿度もまたコーヒーの天敵となります。このため、現在の栽培条件を維持しようとすると、より標高の高い土地に移動しなければならなくなります。ですが、標高が上がれば上がるほどそもそもの土地面積自体が少なくなっていきます。

 こうした要因で栽培適地が減少していくと、2050年には現在の栽培面積の50%程度になってしまうと言われています。これがコーヒーの2050年問題です。
この問題に対応するため、病気や気候変動に強い品種の開発研究や、環境負荷の少ない循環型・持続可能なコーヒー栽培を確立する動きが進められています。

 

2. コーヒーの消費量

 コーヒーの消費量は世界的に増加の傾向を見せており、コーヒー豆輸出国における総生産量も2015年以降増加傾向が続いています。(図1)

01_export_coffee(図1)コーヒー豆輸出国における総生産量

 

 日本における一人1週間当たり飲用杯数は、2020年調査で11.53杯となっており、こちらも増加傾向にあります。(図2)

02_drink_perweek(図2)日本における一人当たりの飲用杯数

 

 また、飲用場所別ではその大部分が家庭または職場・学校となっています。(図3)

03_type_perweek(図3)日本における飲用場所別の杯数

 

3. 47mapsで見るコーヒー購買力

 47mapsでは、世帯当たりのコーヒー購買力データを市町村別の値で色分け表示することができます。さっそく地域傾向を見ていくと、主に北海道・近畿・中国地方において高購買力を示す赤~橙の地域が多くなっています(図4)。ちなみに、コーヒー購買力には喫茶店や飲食店等で飲むコーヒーは含まれておらず主に家庭での消費におけるコーヒーへの支出額データとなっています。

04_map(図4)世帯当たりコーヒー購買力

喫茶店代支出額データも47mapsには搭載されており、見比べてみると北海道や中国地方の支出額は低調で、逆に関東~東海にかけて高支出となっています。(図5)

05_map_coffeeshop(図5)世帯当たり喫茶代支出額

 単純な比較ではありますが、こうしてみると普段コーヒーを飲む場所という点にも地域傾向があらわれていると言えるかもしれません。どちらの数値も高くなっている近畿(主に大阪・京都)については、コーヒー好きの多い地域ととらえることもできそうです。

 

4. なぜ近畿でコーヒー購買力が高いの?

 ではなぜ近畿のコーヒー購買力が高いのでしょうか?その理由について、筆者なりに考えてみた2つの説をご紹介します。

●缶コーヒー草創期における大阪万博での大流行説
●近畿はパンの消費量が多く、セットでコーヒー消費量も増えた説

 一つ目の説は、日本におけるコーヒーの歴史の中に登場した「缶コーヒー」の存在に焦点を当ててみたものです。

 日本においてコーヒー文化が大衆化したのは「文明開化」の明治時代でした。その後、第二次世界大戦の影響で輸入量が激減するなど大きな変化もありましたが、1960年にはインスタントコーヒーが誕生、ほぼ同時期に缶コーヒーも誕生したとされています。

 そして、1969年には世界初のミルク入り缶コーヒーが上島珈琲本社(現:UCC上島珈琲)より発売されます。
このミルク入り缶コーヒーが1970年に開催された大阪万博で人気を博し、今日まで続くロングセラーとなりました。
大阪万博へは全国から人々が押し寄せたため、近畿圏でコーヒー購買力が高いことへの決定的な理由とはしづらい部分もありますが、件の上島珈琲本社は「上島忠雄商店」として神戸で生まれた会社でもあり、万博終了後も色濃く影響が残ったのではないでしょうか?

 二つ目の説は、パン消費量と呼応するような形でコーヒー消費も増えているというものです。
近畿地方はパン購買力の高い地域(図6)で、京都府パン協同組合(当時/現:京都パン組合)理事長の話によると、「京都人は、合理的で新しい物が好き、だからと云うべきか、より選りの伝統あるものがたくさん残っている。また、京都市の街中は職人の町でもあるため、おやつを提供するのに、手軽に食べられるパンが好まれたのではないか」とあり、西洋の食文化を積極的に受け入れた結果とみられています。

 また、神戸もパンとのつながりが非常に深い町で、1869年には神戸初のベーカリーが誕生しています。神戸港の開港が1868年で、まさに文明開化のさきがけとも言えますね。
150年を超える神戸のパンの歴史も消費量増に影響しているかもしれません。
そして、パンとセットになる飲み物を考えるとやはりコーヒーが一番に浮かぶのではないでしょうか?パンとコーヒーというと定番ですよね。

06_map_bread(図6)世帯当たりパン購買力

 

5. おわりに

 今回はコーヒーが抱える未来の問題と日本におけるコーヒー消費の地域性について取り上げてみました。
コーヒー消費の要因については様々な要素が絡んでおり、コレ!と断定するのは難しい面もありますが、その歴史や他のデータとの組み合わせから見えてくる部分を考えてみるといろいろな発見を得られるのが分析の面白さでもあります。

 そして、今後も美味しいコーヒーを飲み続けるためには温暖化対策に向けて一人ひとりができることを考え、対策していく必要があります。2050年になっても今までのようにコーヒーを楽しめるように温暖化対策を心がけていきたいですね。

 

参考文献

Bunn, C., Läderach, P., Ovalle Rivera, O. et al. A bitter cup: climate change profile of global production of Arabica and Robusta coffee. Climatic Change 129, 89–101 (2015). https://doi.org/10.1007/s10584-014-1306-x

コーヒーの2050年問題|FOR SUSTAINABLE COFFEE PRODUCTION|キーコーヒー株式会社 (keycoffee.co.jp)
https://www.keycoffee.co.jp/sustainable/2050.html

コーヒーベルト って?- キョーワズ珈琲 (kyowas.co.jp)
https://kyowas.co.jp/farm/farm_coffeebelt

調査データ | 全日本コーヒー協会 (ajca.or.jp)
https://coffee.ajca.or.jp/data/statistics/

パンのはなし:おいしさの秘密:Q5 パンが大好きな県民は? (panstory.jp)
https://www.panstory.jp/secret/secret05.html

日本にコーヒーが伝わったのはいつ?今日までの軌跡をご紹介 | INIC coffee〔イニック・コーヒー〕をはじめ、おしゃれなギフトを揃えたお店 (inic-market.com)
https://www.inic-market.com/note/history_of_coffee_in_japan/

コーヒーの歴史|知る・楽しむ | コーヒーはUCC上島珈琲
https://www.ucc.co.jp/enjoy/encyclopedia/history/index.html

「UCCコーヒーミルク入り」世界初の缶コーヒー | あの人気商品はこうして開発された「飲料編」 | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト] (smrj.go.jp)
https://j-net21.smrj.go.jp/special/populardrinks/2011072701.html

【実は日本が世界一】ギネスブックも認定!缶コーヒーを最初に「販売」した国 | TABIZINE~人生に旅心を~(tabizine.jp)
https://tabizine.jp/2021/10/26/429762/

パンの街・神戸の歴史。神戸においしいベーカーリーが多いのはなぜ? | 製菓とパンのおしごと(kobeseika.ac.jp)
https://www.kobeseika.ac.jp/contents/sweets-industry/history/

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