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Vol.120 世は平成から令和へ、「働き方改革」が施行

 

 2019年4月1日新元号発表、5月1日午前0時に「令和(れいわ)」が施行。
 同じく、「働き方改革関連法」の一部が、4月1日から施行されました。

 この法律が、新元号と近いタイミングで施行されたことは、働き方の新時代到来を感じさせますね。
 そこで今回は、今さらですが、「働き方改革」って何? どう変わるの? ということで調べてみました。

 

1.政府がいう「働き方改革」の目指すものは?

 まず、その趣旨を確認してみます。


 厚生労働省ホームページより

 我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。
 こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。

 「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。


 と謳っていますが。

 

2.そこで、今回何が施行されたの?

 まず、施行の第一弾は、「労働時間法制の見直し」ということで、働き過ぎを防ぎ、「ワーク・ライフ・バランス」と「多様で柔軟な働き方」の実現です。

 では、その内容はというと、次のようなものとなっています。


 厚生労働省ホームページ参考

 労働時間法制の見直しについて
 (労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法の改正)

(1)残業時間の上限規制

 残業時間の上限が、原則として1か月で45時間、1年間で360時間に規制。

 臨時的な特別の事情があって労使合意する場合でも、

・時間外労働・・・ 年720時間以内
・時間外労働+休日労働・・・月100時間未満、2~6か月平均80時間以内 とする。
・原則である月45時間を超えることができるのは、年6か月まで。

 上記に違反した場合、大企業には4月1日から罰則が適用されます。ただし、中小企業は、2020年4月1日から。

(2)「勤務間インターバル」制度の導入促進

 勤務終了後から翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間を確保する「勤務間インターバル」の導入を促します。

(3)年5日間の年次有給休暇の取得(企業に義務づけ)

 年間の有給休暇が10日以上の労働者には、5日の有休取得が企業に義務づけられます。
 つまり、企業から労働者に強制的に取らせる事になります。

(4)月60時間超の残業の、割増賃金率引上げ

 これまで25%増しだった中小企業も、大企業と同じく50%増しとなります。

(5)労働時間の客観的な把握(企業に義務づけ)

 健康管理の観点から、裁量労働制が適用される人や監督者(管理職)も含め、すべての人の労働時間を把握しておく必要があります。

(6)「フレックスタイム制」の拡充

 子育て・介護しながらでも、より働きやすく、労働時間の調整が可能な期間(清算期間)が延長(1か月⇒3か月)されます。
 例えば、6月に働いた時間分を、8月の休んだ分に振り替えできます。

(7)「高度プロフェッショナル制度」を創設

 一定の年収(1,075万円)以上で、特定の高度専門職のみが対象です。
 対象は、働く時間帯の選択や時間配分について、自らが決定できる広範な裁量が認められている労働者です。
 そして、この対象労働者には、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定が適用されません。
 ただし、使用者は、労使委員会の決議及び労働者本人の同意を前提として、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講じなければなりません。

(8)産業医・産業保健機能の強化

 産業医の活動環境の整備
・事業者から産業医への情報提供を充実・強化します。
・産業医の活動と衛生委員会との関係を強化します。

 労働者に対する健康相談の体制整備、労働者の健康情報の適正な取扱いルールの推進
・産業医等による労働者の健康相談を強化します。
・事業者による労働者の健康情報の適正な取扱いを推進します。


 以上8項目が見直されました。

 

3.では、なぜ「働き方改革」が叫ばれるようになったの?

 最も大きな要因は、少子高齢化に伴う労働力人口の減少が進んでいること。


 2019.4.12 産経新聞の記事より

 総務省が12日公表した平成30年10月1日時点の人口推計によると、外国人を含む総人口は前年より26万3千人少ない1億2644万3千人で、8年連続のマイナスだった。
 働き手の中心となる15~64歳の生産年齢人口は51万2千人減り、全体に占める割合は59・7%。比較可能な昭和25年以降で最低となり、人手不足解消が喫緊の課題であることが裏付けられた。


 上の記事から、前年と比較して、生産年齢人口の減少(51万2千人)が、総人口の減少(26万3千人)の2倍近くもあり、減少幅が大きいですね。
 では、将来の生産年齢人口(労働力人口)の推移はどうなるか、次の図1を見てみましょう。

図1.年齢3区分別人口の推移jinkousuii2出典 ; 国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(平成29年推計)

 

 生産年齢人口の将来の出生中位推計の結果(数字は、日本の将来推計人口(平成29年推計)より)の推移をみると、

生産年齢人口 割合
2015年 ; 7,728万人 (60.8%)
2020年 ; 7,406万人 (59.1%)
2040年 ; 5,978万人 (53.9%)
2060年 ; 4,793万人 (51.6%)
2065年 ; 4,529万人 (51.4%)

 2015年から2065年にかけて、3,200万人も減少、総人口に占める割合も9.4ポイント減少していきます。
 将来に亘って、労働力人口は大きく減っていくことが分かりますね。

 次に、働き過ぎによる健康阻害、育児や介護が仕事の障壁になっていることが問題視されていること。

 厚生労働省ホームページ参考

 長時間の残業など過重な労働が続くと、脳・心臓疾患を発症するリスクが高まることが医学的に知られています。
 ここでは、働き過ぎによる健康阻害の1例として、下の表1に脳・心臓疾患の時間外労働時間別労災支給決定件数を参考に掲載します。

表1.脳・心臓疾患の時間外労働時間別労災支給決定件数
(1か月平均の時間外労働)NouSinzou出典 ; 厚生労働省 平成29年度 「過労死等の労災補償状況」
脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況より

 

 この表1によると、平成28年、29年とも、1か月平均の労働時間数が80時間以上になると、労災支給件数が多くなっています。
 やはり1か月平均の時間外労働が80時間を超えると健康リスクが大きくなりますね。

 次に育児や介護が仕事の障壁になっていることを次の3つの図で見ていきましょう。

 図2-1から図2-3は、育児・介護を理由に前職を離職した人、就労を断念した人、非正規雇用労働者の状況を表しています。

図2-1.育児・介護のため前職を離職(万人)
risyoku
出典;「平成29年就業構造基本調査結果」(総務省統計局)

図2-2.育児・介護を理由に非求職(就職希望者)(万人)hikyuusyoku出典;「平成29年労働力調査結果」(総務省統計局)

図2-3.家事・育児・介護等と両立しやすいことを理由に非正規雇用(万人)
ryouritu
出典;「平成29年労働力調査結果」(総務省統計局)

 

 図2-1で、育児・介護を理由に離職した人は、女性が多く、2017年で男女合わせて育児理由では21.5万人、介護理由では9.9万人となっています。

 また、図2-2で育児、介護を理由に求職活動が出来ない人は、やはり女性が多く、男女計でみると、2017 年で育児では89万人、介護では18万人となっています。
 さらに、図2-3によると、家事・育児・介護等と両立しやすいという理由で、非正規雇用労働者になっている人は、2017年で235万人となっています。
 このように、労働力を減らさないためにも、仕事と子育てや介護の両立が重要な課題になっています。

 労働力人口の減少、長時間労働による健康阻害、育児や介護と仕事の両立、これらの問題に対して、このまま何も対策を打たなければ、生産力・国力が先細りしていくのは目に見えています。

 このたびの「働き方改革」の施行が、生産力・国力の低下を打開する有効な策になればと思います。

 

4.「働き方改革」によって、どう働きやすくするの?

・長時間労働の是正
 長時間労働は、働く人の健康に大きな被害を及ぼし、労働生産性の悪化を招きます。
 使用者は、残業が一定時間を超えた労働者から申し出があった場合、医師による面接指導を実施しなければなりません。
 「勤務間インターバル」制度の導入により、労働者が十分な生活時間や睡眠時間が取れるようにします。

・育児や介護と仕事の両立
 約5割の女性が出産、育児により退職している現状があります(厚生労働省 働き方改革の背景に関する参考資料 から 「仕事と家庭の両立をめぐる現状」より)。
 今回のフレックスタイム制の拡充で、労働時間の精算期間が1か月から3か月に延びました。
 例えば、子育て中の親が、6月に多く働いた時間分を、その分8月の労働時間を短くすることで、夏休み中の子どもと過ごす時間を持つことが出来ます。

・高齢者が働きやすい社会の実現
 平成28年版厚生労働白書よりますと、65歳を超えて働きたい人が約7割、また60歳以降、希望する就労形態としては、パートタイムが最も多く5割以上に上ります。
 例えば、パートタイムを希望する高齢者は、パートタイム労働法の改正(2020年4月1日から施行;中小企業は2021年4月1日から、パートタイム・有期雇用労働法に名称変更)によって、不合理な待遇差(賃金、教育訓練、福利厚生等)のない柔軟な働き方が可能となります。

 働く人にとって、様々な事情に応じた働きやすい社会を目指すためには、上の3つの項目の実行が必要ではないでしょうか?

 

5.外国の働き方はどうなっているのか

 何となくイメージが良さそうなドイツの場合

 日本と比べて、残業がなく、休暇も取って、経済が好調のイメージがありますが、働き方は一体どうなっているのか気になり、そこで、下の表2で比較してみました。

表2.日本とドイツの比較0524JapanVsGermany

 日本に比べてドイツは、年次有給休暇の取得日数が20日多く、年間総労働時間が350時間短いですが、一人当たりのGDPは1.2倍高く、1時間当たりの労働生産性も1.5倍と高いようです。
 よって、ドイツ人は、日本人よりも効率よく働き、稼いでいると言えます。

 しかし、本当にドイツ人の働き方は理想的なのでしょうか?
 そこで、ドイツ人の働き方の現実を色々と調べてみました。

・ドイツ人も場合によっては残業する(最終手段、不可避なとき)
 ただし、前日残業した分、今日早く帰るといった「労働時間貯蓄制度」が浸透。
 付き合いや理不尽な要求によるものは少ない、成果主義なので、自分の出世やチームのためならする。

・休暇1ヶ月取っても仕事が回る?
 担当主義なので、誰かが休暇を取れば、仕事は滞る。
 バカンス時季には、オフィスや役所がガラガラ、店や病院等閉まっていて、不便なときがある。
 しかし休む権利は、お互い様と割り切っている。

・ドイツ人は、自分や家族が優先。
 仕事の場にも、臆することなく、「家族」と「自己都合」を持ち込んで来る。
 ドイツ人は、平気で顧客を待たせる、ある意味、精神的に余裕のある働き方ができる。

 

 以上述べたことから、ドイツ人の方が日本人より、稼ぎも労働生産性も高く、休暇も多く取り、「働き方」としては良い様に思えます。
 しかし仕事では、担当者がいないと滞ったり、生活では不便を感じることもありますが、それが許されるドイツの社会。
 日本は休みづらいが、もし担当者が休暇中で、どうしょうもない場合は最悪呼び出しを食らうこともありえます。
 そこまでして、仕事や生活の穴を開けない様にする日本の社会は便利ですが、ドイツと比べるとどうなんでしょう?
 果たして皆さんは、日本とドイツ、どちらの働き方が、社会や個人にとって幸せに思えるでしょうか?
 筆者は、これからの日本は、働く人の生活や健康を犠牲にしたりしないドイツの働き方を参考にしつつ、働きやすい社会を模索して行けば良いかなと思います。

 

6.最後に

 経済が失われ、人口が減少し始めた平成。
 これから私たちの暮らしがどう変わっていくのか、筆者は、希望や不安が交錯します。
 令和の時代は、一人ひとりが出来る範囲で、色々な困難な問題をカバーしあう社会を目指さなければ、やがて行き詰ってくるのではないでしょうか。

 余談ですが、筆者が入社した平成元年当時、TVで「24時間戦えますか」というキャッチフレーズで、ビジネスマンに訴える栄養ドリンクのコマーシャルが、しょっちゅう流れていたのを記憶しています。
 今回の法律の施行は、まさに隔世の感がありますね。

 

7.補足

 来年2020年4月に、第2弾の施行が予定されています。
 同一労働同一賃金の実現、非正規雇用の待遇改善について、見出しの部分だけですが、お知らせしておきます。


 厚生労働省ホームページより

 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

 ~ 同一企業内における正社員・非正規社員の間の不合理な待遇差の解消 ~
 (パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正)


 

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